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背後偏愛サロン
第3章 誘い
 やはり、大人がついていればすぐに決まるものだ。
 和真が急に有給を取って愛海について行くと言い出して、同行したのだった。
 確かに和真は、あれで面倒見の良いところもあるが、詩織はそれだけが理由とは思えなかった。

 いずれにせよ、これで愛海の居候も終わり、元の生活に戻る。
 ……
 戻るのだろうか――?
 そもそも、戻りたいのだろうか――?

 それにしても――
 なぜ今このタイミングで愛海と偶然出くわしたのだろう?
 しかも、今日だけではない。
 前回に『サロン』に来た時もそうだったはずだ。

 渋谷にも原宿にも近いし、表参道界隈を愛海が気に入ってよく来るようになったとしても、こんなに人の多い中で、地下鉄へ降りる階段もいくつもある中で、しかも全然違う場所に部屋を探しに行っていたのに、こうもタイミング良くはち合わせするだろうか?

 「シオリ姉ちゃん、お友達と会うときはいつもこの服って決まってるの?」
 詩織は一瞬とまどった。
 そういえば『前回』も同じ服装だった。
 しかしそこで詩織はふと、違和感を覚えた。

 あまりファッションにこだわりもなく、自分が前日に履いていたスカートが何だったかも覚えていないような愛海が、どうして『前回』の詩織の服装を覚えているのか?
 ファッションへの興味云々ではなく、単に愛海の記憶力が発揮されただけなのか?

 「んー、確かにこれが一番お姉ちゃんに似合ってるかも……あ、トイレ行ってきていい?」
 愛海はそう言って離れていった。
 愛海の姿が見えなくなると、詩織は急いでスマホを取り出し『サロン』のサイトを開いた。
 後ろ姿の女性たちの写真が次々画面に読み込まれ、表示されていく。

 詩織は目を見開いた。
 一番下に、詩織の後ろ姿の写真が載っていた。
 それも、今着ているコーディネートそのままのものだ。
 前回『サロン』に来た時に、いつの間にか撮られたのだろう。
 もちろん顔は写っていないのだから、他人から見れば誰だかは分からない。

 が、これを『身近な人間』が見たとしたら、どうだろうか……?
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