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背後偏愛サロン
第4章 放ち
どこで顔を見られるか分からないと考えた詩織は、マスクをしてロビーに入ってきていた。
花粉症シーズンでもある。マスクをしていても目立ちはしない。
サングラスも用意しようかと思ったが、マスクとの組み合わせでは怪しまれてしまいそうなのでやめた。
それでもマスクだけでは不安だった詩織は、ロビーに入ってきてからずっと、できるだけ隅っこで壁に向かって立ったまま、じっとスマホに目を落としていた。
その時、詩織のスマホに『会員』からメールが来た。
後ほど、合図のメールを出します。
確認したらすぐにエレベーターに乗って
3階まで行ってください。
そしてエレベーターホールの先にある
男性用トイレの中の個室で待っていてください。
最後の一行にとんでもないことが書いてある。
――男性用トイレ……?
――そんな……
――入れるわけ……!
てっきりホテルの客室だろうと決めつけていただけに、余計にとまどいを覚える。
さらに、メールの文章は続いている。
個室は一番奥、私がゆっくり5回ノックします。
貴女は3回ノックを返してください。
決して顔が見えないよう
後ろを向いたままで扉を開けてください。
メールはそこで終わっていた。
詩織の心臓は、人々が行き交ったり言葉を交わしたりなど多少の騒がしさがある中で、それを全部抑え込んでロビー中に響き渡るのではないかというほどの大きな音を立てている。
花粉症シーズンでもある。マスクをしていても目立ちはしない。
サングラスも用意しようかと思ったが、マスクとの組み合わせでは怪しまれてしまいそうなのでやめた。
それでもマスクだけでは不安だった詩織は、ロビーに入ってきてからずっと、できるだけ隅っこで壁に向かって立ったまま、じっとスマホに目を落としていた。
その時、詩織のスマホに『会員』からメールが来た。
後ほど、合図のメールを出します。
確認したらすぐにエレベーターに乗って
3階まで行ってください。
そしてエレベーターホールの先にある
男性用トイレの中の個室で待っていてください。
最後の一行にとんでもないことが書いてある。
――男性用トイレ……?
――そんな……
――入れるわけ……!
てっきりホテルの客室だろうと決めつけていただけに、余計にとまどいを覚える。
さらに、メールの文章は続いている。
個室は一番奥、私がゆっくり5回ノックします。
貴女は3回ノックを返してください。
決して顔が見えないよう
後ろを向いたままで扉を開けてください。
メールはそこで終わっていた。
詩織の心臓は、人々が行き交ったり言葉を交わしたりなど多少の騒がしさがある中で、それを全部抑え込んでロビー中に響き渡るのではないかというほどの大きな音を立てている。