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背後偏愛サロン
第4章 放ち
 はあっ……はあっ……
 精液と尿が同じ穴から出るのがいまだに不思議だったが、和真ではない男根から『液体が出る』というだけで、身体が反応を始めてしまっている――。

 水を流す音が聞こえた。
 少し自分を落ち着かせようと詩織が静かに深呼吸した時――

 コン――
 
 思いがけず扉から聞こえたその音に、詩織の全身がびくついた。
 コン――
 まさか。
 コン――
 無関係の男性が用を足しに来ただけだと……
 コン――
 思ったのに……!
 コン――
 ノックは止まった。
 五回。
 間違いない。

 今度は、詩織の番だ。
 軽く握った右手が震えてきた。
 迎え入れたら、それこそ逃げ場はない。
 なのに――
 今の詩織には不安がなかった。
 むしろ、逃げ場なんてない方がいい。
 いっそ、監禁されたって――

 コン――
 詩織は、ゆっくりと内側から扉をノックした。
 コン――
 扉に向かって背中を向ける。
 コン――
 三回目を叩くと、手探りで扉の留め金を外した。
 背後で、そっと扉が開き、『オス』の気配が中に入ってきた。

 詩織の身体は硬直し、両手はももの横で勝手に指先までまっすぐ伸び、直立していた。
 まるで叱られて立たされている小学生のようだ。

 入ってきた男性は静かに扉を閉め、留め金を掛ける。
 かすかに鳴るカチャリ……という音が、詩織には『もうお前は逃げられないんだ』という宣告のように聞こえた。
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