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背後偏愛サロン
第4章 放ち
 スーツの生地のようなものがこすれ合う音がする。
 後ろを向いたままなのでもちろん見えているわけではないが、中腰になった男性の顔を尻の近くに感じる。
 ふぅ……っ……ふぅ……っ……
 できるだけ静かに、詩織はマスクの中に熱い息を吐き出す。

 詩織は、タイツに覆われた左右のもも裏を、両方の手のひらで触れられたのを感じた。
 力強く、節くれだった手だ。
 ほんのわずかに太もも全体がふるっ……と揺れる。
 尻のすぐ近くで、かすかに男性の呼吸音がする。
 相手の方も、できるだけ音を抑えようとしているのが分かる。

 詩織のそれぞれのもも裏を、二つの手のひらがゆっくり撫で上げる。そしてコートの裾と一緒に短めのフレアスカートを徐々にまくっていく。
 スカートがめくれてこすれる音はもちろん、手のひらとタイツの細かな編み目とが織りなすササア……という摩擦さえも、極めて大きな音に聞こえる。
 それほど、ここは静かだ。
 柔らかくそっと触れてくる甘い感触が、尻を抜けて、腰から背筋を駆けのぼってくる。

 ――んっ……
 ――こんなところで……
 ――声が漏れちゃったら……
 詩織はバッグからハンカチタオルを取り出し、マスクの間から口にねじ込んだ。全部はくわえられない。少しはみ出した状態で再びマスクを戻した。

 股の間に何か固く小さいものの感触を感じた。
 その直後、突然ビリッ……と大きな音がした。
 続けて、何かが裂けていく同じような音が二回続く。
 ――え……?
 ――な、なに……!?
 詩織はその音の大きさにも驚きうろたえたが、何が起こったのか分からないことにも激しく動揺した。
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