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背後偏愛サロン
第5章 貢ぎ
 愛海はショルダーバッグからスマホを取り出して、もう一度『サロン』のサイトを表示させた。
 スマホの画面に出ている文字に目を走らせる。

   普段の外出着で街を歩く貴女の後ろ姿は、
   それだけで蠱惑的なのです。

 そして愛海はそこに載っているメールアドレス宛にメールを出した。
 愛海は他の人形の写真を見て回っていると、ほどなく返信メールが来た。
 メールには、今いるこの建物に何時に来ることができるか、という質問が書いてあった。
 愛海は、

   もうここにいます

 とだけ打って返信した。
 すると、『STAFF ONLY』の扉からカチャリ……と小さな音が聞こえた。
 愛海は真っ直ぐ扉に向かい、ドアノブに手を掛けた。
 扉が、開いた。

 扉の向こうは短く狭い廊下だった。
 廊下の左右に一つずつ、突き当たりに一つ、全部で三つの扉が見える。
 愛海はスマホでメールを確認した。
 『3』の部屋に来るよう書いてある。
 突き当たりの扉に小さく『3』のプレートが貼り付けてある。

 愛海は一歩進み、左の『1』の扉に耳を密着させた。
 何も聞こえない。
 扉も鍵が掛かっていて開かない。
 右の『2』の扉も同じだった。
 この『1』か『2』のどちらかに、詩織がいるのだろうか。
 いや、きっといる。
 しかし、今はもうそれはどうでもいい。
 自分も『3』の扉に入れば、詩織がしていることと同じ体験ができるはずだからだ。

 愛海は突き当たりの扉を開け、中に入った。
 四畳ほどのこぢんまりとした部屋は、暗めのダウンライトで琥珀色に照らされ、床は紅く毛並み豊かな絨毯が敷かれている。
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