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背後偏愛サロン
第5章 貢ぎ
 愛海は一番奥に掛けられている、天井から胸元くらいの長さのカーテンに違和感を覚えた。
 窓を隠すための物でないことは確かだろう。そのカーテンの向こうにも、同じ素材で床につく長さのカーテンがあるからだ。カーテンというより緞帳と言った方が正しいだろうか。
 一番の違和感は短い方のカーテンに穴が開いていることだった。

 愛海は、入口横にあるチェストの上に蝋で封をされた封筒が置いてあるのを見つけた。
 愛海はそれを手に取り、封蝋をはがして中の便箋を開いて読んだ。
 便箋にはペンの手書きの綺麗な字が並んでいる。
 愛海はそれにひと通り目を通した。
 あのカーテンの穴は顔を入れるためのものらしい。
 顔を通して後ろ向きにじっと直立していればいい、ということが書いてある。

 ――それだけ……?
 確かに、サイトの文面にも『後ろ姿を見せるだけ』とは書いてあった。
 ――絶対それだけじゃない。
 詩織は――
 『気持ちいいところ』と言った。

 それは、『サロン』に行った後の詩織を見ていれば感じ取れる。
 愛海の直感は、後ろ姿を見せる以上の何かがあると言っている。
 愛海は、あふれる好奇心を満たしてくれる何かを期待していた。
 いや、絶対に満たしてくれる――そう確信していた。

 愛海はチェストの上にバッグを置くと、胸元まで垂れ下がっているカーテンの前まで来て穴に顔を入れた。
 顔の前、愛海の胸元の高さに手すりのような棒が一本、左の壁から右の壁まで横に通っていた。
 そのまま、愛海は立って待った。
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