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背後偏愛サロン
第5章 貢ぎ
(2)
詩織はひとり、待っていた。
床まであるカーテンの前で――。
今いるこの部屋は、目の前の長いカーテンでちょうど真ん中あたりで仕切られている。
詩織の頭のすぐ後ろには、穴の開いた胸元くらいまでのカーテンが、左右の壁の端から端まで垂れ下がっている。
二つのカーテンの間に挟まって、詩織は静かに待っていた。
カーテンの向こうから、かすかに声が聞こえた――。
詩織はカーテンを端から開いていった。
目の前に、愛海の姿が現れた。
詩織は、カーテンを部屋の端まで全部開くと、愛海の前に立った。
愛海は見ず知らずの会員の男性に身体をまさぐられて、目の下をほんのり赤らめている。
胸元あたりまであるカーテンの穴から、顔だけ出している愛海の表情は『オンナ』のそれだった。
詩織の目に、子供の頃の愛海の姿が重なった。
テレビに出ている子役が大人になっても子供に見えてしまう、それに似た感覚だ。
詩織の目に映る愛海はいつまでも昔の少女のままなのに、身体は成熟に向かって確実に駆け抜けている。
詩織は目を下に向けた。
開き気味にした愛海の脚はかすかに震えている。
その後ろの男性の姿は、愛海が顔を通しているカーテンに隠され、詩織からは彼の足だけが見えている。
詩織を目の前にした愛海は、快楽に身体を少しずつ沈められつつある表情の中に驚きの色を浮かべ、何かを言おうとしていた。
詩織はとっさに左手で愛海の口を押さえ、右手の人差し指を自分の唇の前に立てた。
詩織は少しかがんで後ろに下がると、もう一枚の短いカーテンの穴に顔を入れて直立した。
愛海の手を拘束している手すりを挟んで、二人とも短いカーテンから顔だけを出して向かい合う形になった。