この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただそこに君がいた
第2章 いつからか
『ねぇあの…交代しない…?』
背後から、そろそろと声がかかる。どうやら準備ができたらしい。
『さっさと入れば。声震えてんじゃねーか。』
『うん、だから…代わってくれない…?』
『前来りゃいいじゃん、空いてるよ。』
昔と違い、何年か前にリフォームした湯船は、オレでも足を伸ばして入れるサイズ。体育座りをすりゃ、大人二人でも十分浸かれる広さだ。
『空いてるのは分かってるけど…』
『恥ずかしーなら背中向ければ?オレもほら、後ろ向いとく。』
モジモジしてる一夏の為に、目を瞑って向きを変えた。湯船の真ん中で背中合わせをすりゃ、俺の視界は壁…にかかってる風呂の蓋。一夏の視界は湯沸し器のついてる壁だ。問題ねーだろ。
ちゃぷん…
ようやく入ってきた一夏のおかげで、湯がざぷーんと溢れ出る。それから『ふぅぅ…』と気の抜けた声が聴こえてきた。