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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉



 するとどうだ。鍵が開いているではないか。


 いよいよ倒れている危惧に、杏璃は焦って部屋へと踏み込んだ。


「司!? 司、いるの!? 大丈夫!?」


 初めて入る彼の部屋の内装を見る余裕もなく、杏璃は大声で呼び掛け、靴を脱ぎ散らかす。


 通路にある一室の扉の奥から、ガタッと物音がした。


「えっ!? あ、杏璃!? なんで……っ!?」


 声が返ってきて、意識はあるようだと胸を撫でおろし、散在する靴を揃えつつ。


「ごめんね、勝手に来て。司が熱あるって聞いて、居ても立ってもいられなくて。必要そうな物、色々買ってきたから」


 意外と元気そうな声を聞いて安心したからか、答えながらもようやく恋人らしいことが出来ているな、なんて考えてしまう。


「い、いいっ! ほら、うつるといけないから帰って!」


「もう、司ったら。遠慮しなくていいよ。入るね」


「駄目……っ! 入らないで!」


 病人なのに杏璃のことを考えてくれる。なんて素敵な恋人を持ったのだろう、とこんな時に不謹慎だが幸せに浸り、そして――。


「お邪魔します」と頬を緩ませて扉を開けた先には。








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