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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔
春馬の自宅に入ったのは何年ぶりだろう。高校生になってからは踏み入れていないから、軽く見積もっても三年以上は経っているか。
彼の両親も共働きのため不在で、年の離れた姉がいるが、彼女は嫁いですでに家を出ているので室内は静かだ。
二階へと続く階段を上がり、道路に面した一室が彼の自室だ。
扉は開けたまま部屋に入ると、春馬は椅子に座った。彼の前にはパソコンが置かれる机がある。
杏璃は春馬が正面に向かう形で床に正座する。
久しぶりに彼の部屋に入ったが、記憶とは随分違っていた。
子供らしい玩具や雑貨類が乱雑していた部屋は、今では機能的でいて整然としている。彼の趣味なのか、オーディオ機器は立派なものだった。
だがそれらには目もくれず、杏璃は春馬を一点に見据える。
「春馬……。私が間違ってた!」
不眠の瞳は血走り、他を圧倒するような迫力がある。その目で見つめたまま、静謐〈セイヒツ〉を震わす声で告げる。
「何をどう間違ってたんだ? きっちり説明してみろ」
対する春馬は杏璃を試すような眼差し。それでいて未だ冷たい色を放っている。
答えを一手でも間違えれば、即座に斬り捨てる。そんな言を言葉にせずして伝えてきているようだった。
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