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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔
そうこうしているうち、穂奈美は快楽に身を沈めていった。
嫌悪していた性交と母の姿。しかしいつしか彼女自身にも、母と同じ血が流れていると認めざるを得なくなっていったのだ。
「恋とか愛って、余裕のある人間の特権なんだって穂奈美は思ってたのかもね。だから最後に登場する男性が、本気で穂奈美に愛を伝えても、穂奈美は受け入れなかった。受け入れられなかった……って私は感じたけど、それも違った。すごいよ、あれ書いた作者」
彼女の身体だけを求める男たちと違い、最後の相手は彼女の心も求めた。普通に考えれば、その彼と結ばれるのが穂奈美の幸せだし、ハッピーエンドに繋がる。
しかしエピローグで穂奈美に寄り添うのは、ほんの一瞬しか登場しない男性だった。
彼は公園の東屋で雨宿りをしていた穂奈美に、自分の傘を差し出した。そればかりでなく、偶然腹の鳴った穂奈美に、コンビニで買ったばかりの温かな肉まんをあげた。
何の対価も求めず、彼女に触れることもなく、親切心だけを提供したのだ。
エピローグまで読んだ杏璃は、なぜ穂奈美が彼と一緒にいることを選んだか理解出来なかった。穂奈美の性欲を満たす描写は見当たらなかったのに。
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