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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔
「昨夜読んでみて、ようやく解ったよ。作者があとがきにも触れてたけど、穂奈美を本当に満たすのは、彼女が嫌悪しているものも認めたうえで……エッチじゃない穂奈美に愛を捧げること。それが正しい彼女の取扱説明書だったんだね」
それまでに登場してきた男たちは、瑞々しくもいやらしい肉体を満たせば、彼女を手に入れられると思っていたのだろう。
だが穂奈美の選んだ男は、無償の施しをしてくれた。快楽を切り離した部分で、彼女に優しくしてくれる。そんな男を心の底では望んでいたのに、誰も気づこうともしてこなかったのだ。
「義父と禁断もさ、二人とも寂しかったんだよね」
義父は妻と息子を、昌子は夫を亡くし、埋めたくても埋めようのない奈落のような穴を、互いで埋めようとしただけだった。
義父は時に父のように、時に夫のように、そして時には恋人のように振る舞い、昌子の寂しさを紛らわせた。
昌子も同様に妻のように娘のように、そして恋人のように。
そうしなければ寂しくて、寂しくて……日々狂いそうだったのだ。
セックスに溺れていれば、一時〈イットキ〉でも寂しさを忘れられる。その後にくる強烈な後悔と胸に走る痛みがあると知っていても、禁断の甘露に浸る心地よさを覚えてしまい、後戻りが出来なくなっていった。
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