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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔
◇◇◇◇
「……ど、どうでしょうか、春馬様」
泥のような眠りから覚めた杏璃は、一晩でここまで書ききり、翌朝になって春馬へとメールをした。
初心者中の初心者が書いた性愛描写。書いた本人はセックス経験のない初心者未満だ。しかも男性を主人公にしてしまったことで、体験出来ぬ感覚と感情を描かなくてはならず、春馬の判断を仰ぐことにしたのだ。
夕方からなら時間を作れるという返信に、都合のいい時間に来てと返して現在時刻は夕方の六時だ。
オレンジ色に照らされる室内で、杏璃のパソコンに向かっていた春馬が感想を述べる。
「まぁいいんじゃないか」
「ほんと!?」
「ここだけなら処女が書いたとは誰も思わんだろ……多分。さすがエロの知識を短期間で詰め込んだだけはある」
「処女は余計だから!」
「ああ、でも一箇所気になる部分がある」
「どこ?」
「この“白い背中をそっと寄せて、背後から手を回す”の部分」
「それが?」
「端的に言うと、くどい。背中って言い回しが前述されてるのに、また背後って単語が出てるだろ? ここは“白い背中をそっと寄せて手を回す”だけで伝わると思うが」
「なるほど……。うん、解った、直しておく! やっぱ春馬は頼りになるね、ほんと」
忘れないうちに言い回しのくだりをノートにメモし、杏璃は称賛を贈る。
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