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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉



 あの聖人君子のような司が纏う邪悪な気配。


 誰にだって人に言えないこと、言いたくないこと、隠したいことの一つや二つはあるだろう。


 杏璃の突然の訪問により、それを暴かれた司の心境を思えば、いくら温厚な彼でも怒るのは当然だ、と杏璃は考えた。


「さっきも話したけど。私なら気にしないし、男の子が“毒”を抜かないと、男の象徴的なモノが爆発するらしいって聞いたとあるし、ああいういかがわしい物を集めるのもまぁ……許容範囲だよって言ったの。でも……」


 杏璃の耳年増で偏った知識を披露しつつ、司の嗜好に口出すつもりはないと暗に告げたのだが。


 それが更に司の怒りを買うとは。


「“これをいかがわしいって言った!? 高尚で芸術的作品たちを!?”って。司のあんな低い声、聞いたことなくて……。ただでさえ混乱してたのに」


 言葉を切り、ブルッと震える。


 正直、殴り掛かられるんじゃないかとさえ思う司の変りよう。


 禍々しさを身体から放ち、部屋に充満させる彼は、悪魔にでも魂を乗っ取られたのではないかと、本気で杏璃に考えさせた。


 思い出し恐怖に細い身体を震わせる杏璃。しかしそれでもまだ、司に与えられた衝撃を思えば、序の口だったのだ。





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