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妄想シンドローム
第4章 愚者の後悔




「少し小説家らしくなったじゃないか」


「ふぇ?」


「官能小説だからって理由でストーリーを練るんじゃなく、登場人物の気持ちになって練れるようになれば、やっとスタートラインに立ったってこと」


 褒められたと思いきや、まだスタートラインなのかと落胆を隠せない。


「小説に向き合うって言葉が嘘じゃなかったのは解ってよかった」


「なんか今日の春馬、気持ち悪いくらい優しいんだけど、熱でもある?」


「お前のその余計なことばかり言う口を永久に塞ぐには、セメントを持ってこようか、それとも海へ沈めた方がいいか俺も迷ってしまうなぁ」


「やだなぁ春馬ってば! そんなどこぞのヤーさんみたいな発想しちゃって! うふ」


 語尾にハートマークを漂わせて小首を傾げる。しかし彼には通用しなかった。


「冗談かどうか知りたいか? 手っ取り早いのはお前の息の根を止めることだって、俺は前々から思ってたぞ」


「いいえ、知りたくありません。どうかその穏やかならぬ思考は削除してください」


 ガクブルと震えて杏璃は床に伏す。


「そ、それよりもですね! 他に気を付けるべき点があればご教授願えませんかー?」


 頭を上げて小説に話題を戻した。命を繋ぐために、揉み手まで付け加えて。






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