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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?
その総一も時間が経つにつれ、ルルが生活の一部になっていく。
ルルの予想外の行動に慌てたり、彼女が人間でないとばれそうになってひと騒動あったりと、彼の平坦で無色だった生活に波と色が付いて。
大胆に迫ってきたり、一心に自分だけを見てくれるルルを総一は好きに――。
とそこまで考えて、杏璃の表情が険しくなった。
視線はどこに置かれるでもなくゆらゆらと彷徨い、遂に髪に指を差し入れて頭を抱えてしまった。
「じゃあなんで……あいつは私のことを……」
絶望を滲ませる声色が、室内に霧散する。
杏璃も司だけを一心に想ってきた。付き合っているからとかではなく、勉強も出来て人あたりも良くて、何より杏璃を大事にしてくれる彼のことが好きだった。
――今となっては人を欺く仮面だと知ってしまったけれど。
しかし司はそれほどまでに自分を想う杏璃が傍にいて、少しも心を揺さぶられることはなかったのだろうか。
杏璃が司のタイプではなかったにせよ、自分の性癖を偽るために杏璃を選んだ理由があったはずだ。
つまり僅かでも杏璃を魅力的と感じたのだろうのに、なぜ彼は好きになってはくれなかったのだろうか。
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