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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?
ランチタイムの現時刻、普段よりも店内は華やいでいる。この店はスイーツが絶品なのだが、ランチにもなかなか定評があるのだ。
由奈と向かい合って美味しそうな匂いを立たせるオーガニック料理を囲み、杏璃は自分の置かれている状況を打ち明けていた。
「――というわけで、この四日間、まーったく進んでないの」
「なるほどねぇ。小説書くのって大変なんだね」
杏璃は以前、文字を打てる機器さえあれば誰にでも小説は書けると思った。だがその考えは間違いだった。
大まかなあらすじが決まってさえいれば、トントン拍子で書ききれるだなんて砂糖菓子より甘い考えだった。
滔々〈トウトウ〉と溢れていた妄想がひとたび止まると、文字が打てなくなる。これは杏璃が真摯に取り組んでいる証拠とも言えるが、彼女はそこまで考えが至らず、物書きならば一度は陥る危機を打破する方法を探りかねていた。
「やっぱ何の知識もなく、公募に挑もうとするのが無謀だったのかなぁ」
「んー、でも杏璃ちゃんには強い味方がいるじゃない。幼なじみ君は相当な読書家なんでしょ? 彼の協力があれば無謀でもいい感じの仕上がりになるかもじゃん?」
「だといいけど」
「ていうか杏璃ちゃん。その彼に男の恋愛事情を聞けばいいんじゃないの?」
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