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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?




 そこから終始男の愚痴合戦。


 身勝手な男に傷つけられた者同士、話題は尽きることなくて。仕舞いには過激な発言を声高々に語る杏璃たちを、店員が注意してくるまでになってしまった。




「あー、暫くは出禁かなぁ」


 気まずい思いで店を出た二人。


 杏璃はしまったと顔を歪めて反省する。


「じゃあ今度は私のオススメのお店行こうよ! また誘うから」


「うん、連れてって。連絡待ってるし、私もするね」


「うん。杏璃ちゃん、小説頑張ってね! 書きあがったら私にも読ませてね」


 手を振り合って別れた帰り道。杏璃は近くのスーパーへ寄り、春馬へ贈るお礼の品に必要な材料を買い揃える。


 ビターの板チョコ、粒チョコ、アルミカップ……。自宅になさそうな材料を次々とカゴへ入れる。


 会計を済ませて帰宅した杏璃は、早速台所に立った。


 手慣れた手付きで材料を切ったり混ぜたり。


 司に喜んでもらおうと、少しでも好かれようと身に付けた料理や菓子作りの腕前。だが結局一度も披露せずに終わってしまった。


 司の弁当はいつも母親の手作りで、杏璃がたまには自分が作ると申し出てもやんわりと断れ。菓子も甘い物は苦手だからと、バレンタインチョコすら受け取ってもらえなかった。


 今になって考えると、他人の手垢がついた物を口にしたくなかったんじゃと懐疑的になる。







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