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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?




 ボウルに残るのは、杏璃の乱暴な混ぜ行為から逃げそびれた僅かな残骸。


 春馬に作るついでに両親にも振る舞おうと材料は多めに買ってあったのが幸いし、作り直しは可能。


 しかし追憶への怒りで気力も、それからどれだけ回したのか腕の力もなくし、菓子作りは翌日に持ち越すことにした。




「でーきた!」


 翌朝に調理した菓子はいい匂いを立たせて、美味しそうな仕上がりになった。暫く冷まして箱に詰め、紙袋に入れて準備完了。


 テーブルに置いたそれを満足気に見遣り、杏璃は春馬にメールを送る。


『今から行っていい?』と送信してから数分後。返ってきたのは『無理。眠い』と簡素なメール。


 時間を置いて改めようとは思ったが、せっかく作ったのだし、どうせなら作りたてを食べてもらいてくて再度メールをする。


『いつものお礼にプレゼントを作ったの。春馬の好きな甘い物だよ! 渡すだけで帰るから』と。すると『何?』と脈ありな感触の返信。


 チョコレートカップケーキと伝えると、即座に『すぐ来て』と返ってきた。


 反応の速さに杏璃は噴き出しそうになる。あんな冷酷無比な人相で、甘い物好きなのが笑える。


 杏璃はカップケーキの入った紙袋を手にぶら下げ、玄関まで走った。







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