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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?




 意気揚々と門扉をくぐった杏璃。だが直後に視界に入った人物に、凍り付いてしまった。


「――え?」


 その人物――司は杏璃に気づき、仏頂面で頭を掻いてから一瞥をくれる。


「ちょっと……近くまで用事で来てたから」


 言い訳っぽいようなことを司が呟いた気がしたが、突然の遭遇に気が動転している杏璃は、走りかけていた恰好のまま動けないでいる。


 まるで非常口のイラストのような姿をした杏璃に、司は歩み寄ってきた。


「だから! 別に杏璃に会いに来たとかじゃないから。勘違いしないでよね」


 状況をどうにか飲み込んで、冷静さよ戻ってこいと手繰り寄せて考える。


 彼は近くに用事で来てたと言わなかったか? しかしここいらは住宅街で、これといっためぼしい施設はない。時刻も九時を少し回ったくらいで、知り合いの家に行ったとしても早いのでは?


 だからつまり、そんなわけあるか! と突っ込まざるを得なくて。


 杏璃に会いに来たのではないと言ってもいたが、ならなぜこんなところでうろついていたのか。


 総合すると、理由は明白。


 杏璃はすぅっと息を吸い込み、言い放つ。


「家に嫌がらせの落書きしたら、通報するからね!」






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