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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?




 ガルルル……と牙を剥く杏璃に、司は呆気に取られているが、気を取り直した様子で居直る。


「そ、そんなこと僕がするわけないでしょ。落書きする道具持ってるように見える? 杏璃ってほんと馬鹿」


「はぁん? 自宅の位置を確認して、後日やるかもじゃん! 司って陰険だから!」


「僕のどこが陰険だって? こーんなに爽やかな僕が?」


「はっ。それこそどーこが爽やかよ。腹ん中真っ黒で煤だらけのくせに」


「へえ? 杏璃って透視能力でもあったんだ。びっくりー。僕の彼女役は超能力者だったなんてねー」


 びっくりと言いながら、単調でいて見下した口調に、イラッとする。


「口の減らない……!」


 ギギギと歯を軋ませ、杏璃は夏の暑さに負けじと燃える。


 だが言い争いをするのも時間の無駄だと強烈な鼻息を一つ吐いて、司を置き去りにして春馬の家へと行こうとした。


 だが進路方向を司に阻まれる。


「どいて。邪魔なんですけど」


 睨み上げるも、司は余裕たっぷりで見下ろしてくる。


「会ったついでだから言うけどさ。僕のメールや電話に出ないの、どういうつもり?」


「どうもこうも、こっちには用件ないからよ」


「僕にはあるの。口裏合わせに、出掛ける約束したじゃないか」


「そっちが勝手に言ってただけじゃない。私は約束したつもりないけど」






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