この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?
杏璃はまた司を通り過ぎようとした。しかし脚の長さというコンパスの違いで、杏璃よりも早く先回りされてしまう。
「もう! 邪魔って言ってるじゃない」
口を尖らせる杏璃を司は意に介さない様子。
「約束した。僕が全額払うなら行くって。杏璃に僕の財布を開く価値はないと思うけど、他人に触られる危険を避けるために仕方なーく奢ってあげてもいいよ」
「仕方なーくなら、ご遠慮します! こっちだって奢られても行きたくないんだからね」
「杏璃の意思はどうでもいいってば。とにかく行くったら行くんだよ」
「嫌だってば。口裏合わせなら一人でどっか行ってきて、その時の様子教えてくれればいいじゃん。話し合わせれば済むでしょ?」
だんだんと司と話しているのが疲れてきて、投げやりな言い方になる。
だが彼は一向に引く様子はなかった。
「もしそこに知り合いがいたら? それに僕一人で人ごみに出掛けると、うじゃうじゃ女共が寄ってくるんだってば」
司の自信はどこから来るのか。――過去にそういった経験をしたとしても、自慢にしか聞こえず嫌気がさす。
本気でぐったりとしてきた杏璃は、もうどうでもよくなってきて頷きかけると、司の背後に光明――いや、暗黒の影を見た。
.