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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?




 杏璃はまた司を通り過ぎようとした。しかし脚の長さというコンパスの違いで、杏璃よりも早く先回りされてしまう。


「もう! 邪魔って言ってるじゃない」


 口を尖らせる杏璃を司は意に介さない様子。


「約束した。僕が全額払うなら行くって。杏璃に僕の財布を開く価値はないと思うけど、他人に触られる危険を避けるために仕方なーく奢ってあげてもいいよ」


「仕方なーくなら、ご遠慮します! こっちだって奢られても行きたくないんだからね」


「杏璃の意思はどうでもいいってば。とにかく行くったら行くんだよ」


「嫌だってば。口裏合わせなら一人でどっか行ってきて、その時の様子教えてくれればいいじゃん。話し合わせれば済むでしょ?」


 だんだんと司と話しているのが疲れてきて、投げやりな言い方になる。


 だが彼は一向に引く様子はなかった。


「もしそこに知り合いがいたら? それに僕一人で人ごみに出掛けると、うじゃうじゃ女共が寄ってくるんだってば」


 司の自信はどこから来るのか。――過去にそういった経験をしたとしても、自慢にしか聞こえず嫌気がさす。


 本気でぐったりとしてきた杏璃は、もうどうでもよくなってきて頷きかけると、司の背後に光明――いや、暗黒の影を見た。






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