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妄想シンドローム
第5章 恋のイベント発生!?
司をそっと見上げると、彼は不気味に笑っている。その彼と目が合い、杏璃の毛穴という毛穴が開ききる。
「どういうことかな、杏璃? 僕との取引き忘れちゃったの?」
杏璃の心臓が不穏な音を鳴らして早打つ。
由奈という味方がいるから独りぼっちにはることはないだろう。しかし彼女といないときや、もしくは彼女を巻き込んで嫌がらせを受ける未来が脳裏を掠め、震えあがる。
「それはその……」
過去の恐怖も甦ってきて、強気な杏璃がなりを潜める。
脚を小刻みに震わす杏璃の横に春馬が立った。
「何を早まっているか知らないが、こいつは取引きを反故にはしてない。お前の突き付けた取引きとやら以前に聞いてるからな」
春馬は司を冷ややかに見つめ、杏璃の頭にぽんと手を置く。
彼の手の重みに杏璃は心強さを覚える。
司は舌打ちをして、苦々しく杏璃を睨む。だが隣にいる司に勝る威圧感の持ち主のお蔭で、司の睥睨〈ヘイゲイ〉に恐怖はなかった。
「というわけで、変態ストーカーさんは変態城に帰ったらどうだ?」
そう言うや、司は杏璃の腕を引いて家へと足を向けた。
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