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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉
「挙句になんて言ったと思う!? “惰性で付き合ってたってのに、本気にしてたなんてほんとバカだよね”って! なによ、惰性って!? あっちから告ってきたくせにっ!!」
ダンダンダン、と何度もテーブルを叩いていると。
「おい、やめろ。テーブルが可哀相だ」
この男は無慈悲か、と思える指摘が杏璃を刺す。
だが杏璃は意に介せずに、杏璃と司の会話の一人二役を再開する。
「だからあたしは訊いたの。好きって言ったのは嘘だったの? 結婚するまで一線超えないでいて、綺麗な身体でヴァージンロードを歩こうって言ってくれたのも嘘? って。そしたら極上にゲスい顔して“あー、それね”って。そのあとなんて言ったか解る!?」
「今のお前の顔も、相当イラつくものだったぞ」
「だからこーんな顔してたの、こーんな!」
人を見下す目付き、煽る口調、首の角度までも正確に再現したそれは、杏璃や春馬でなくても苛立つに違いないもので。
なおかつあの綺麗な顔でやられたら、破壊力は満点だったのだ。
杏璃は司から放たれた衝撃の言葉を思い出し、口にするのも辛かったが、意を決して吐き出した。
「……“僕、他人の体液とか、ほんっと無理なんだよね。汗すら気持ち悪い。セックスなんて……考えただけでおぞましいよ。だからああ言っとけば、少なくともあと何年かは触らなくていいでしょ?”」
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