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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い




 春馬曰く、メールを杏璃に送ったとのこと。それからインターフォンも何度も押した。しかしメールもインターフォンも応答はなく、だが一応ドアを押してみたら開いていたらしい。


「いや、普通誰も出なかったら帰ろうよ! てか乙女の部屋に勝手に侵入とかしちゃダメでしょー!?」


 上掛けを頭からかぶり、春馬の説明を聞いていた杏璃。寝顔なんて家族以外に見せたことないのに。


「ハッ。乙女? 処女って意味なら乙女だろうな。その自称乙女さん。ストーカーか俺か、どっちの侵入ならまだ許せる?」


「えっ!? ストーカーって……またあいつ来てたの!?」


「さっきそこで会った」


「嘘ぉ!?」


 叫んでから杏璃は枕の脇で充電器に挿してあるスマホを取る。寝坊する気満々だったのでサイレントにしてあり気が付かなかったが、着信が恐ろしい回数鳴っていたようだ。


「うわっ! 何これ!」


 ハートマークで囲んだ『司』から『スルー推奨』の登録に変更してある文字が、着信欄に連なっているのを見て杏璃は戦慄した。


「あんな危ない奴がうろついてるってのに、お前の親は何を考えてるんだ? 鍵もせずに仕事へ行ったのか。能天気は親譲りだな」


「私に文句言わないでよ。で、あいつまだいるの?」


 外を見るのも恐ろしく、壁際で身体を丸めて上掛けに潜る。




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