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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い




「いない。追い払った」


 ニヤリとする春馬は邪悪だった。幸い、布団に包まっていてその顔を見ずに済んだが。


「ほんと? ありがとー春馬」


「とくと感謝しろ。だから繭から出てこい」


「……春馬が出ていってくれない?」


「お前は救世主の俺を追い出すのか。いい根性だ。小説の手直しの前に、根性を叩きなおす必要がありそうだ。なぁ?」


「じゃなくて! 私寝起きなの! 顔も洗ってないの! リビングで待っててってば」


 年頃の娘として当然の主張。昔から知ってはいても、夜更かしの上にスッピンで、むくんでいるだろう顔を見られたくはない。


「……」


 無言の対応を不思議に思い、目だけを上掛けから出す。すると春馬の馬鹿にするような顔があった。


「お前……一丁前に恥じらってるのか? だが安心しろ。お前の間抜けな寝顔見たら、大抵の男は逃げていくから」


「うっさい! うっさーい! 間抜けじゃないもん! お父さんは天使の寝顔って言ってくれたもん!」


「親の欲目ってすごいよな。まっ、リビングで待っててやるから早くしろよ」


 そう言って春馬は杏璃の部屋を出ていく。


 寝起きに春馬の毒舌はかなりキツイ。


 しかし……そんなに自分の寝顔は酷いのだろうかと心配になり、今度親に頼んで寝顔を映してもらおうと思った。







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