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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い




 とそこへ、サイレントから音を鳴るように設定変更しておいたスマホが着信を告げる。


 ディスプレイには『スルー推奨』の文字が浮かび、杏璃はゲッと顔を歪める。


「また来た! どうしよう……」


「無視してるからしつこいんじゃないのか? 出るだけ出て用件聞け。手に負えなくなったら代わる」


「そう? はぁ……憂鬱」


 気の乗らない手付きでスマホを操作して、耳に押し当てる。


『やっと出た! 何してたのさ』


「そっちこそどういうつもりなの? また家に来てたんだってね」


『そのことなんだけど今一人?』


「え? 違うけど」


 スマホの向こうから舌打ちが聞こえた。


『僕の電話は無視するくせに、その男とは会ってるんだ。へぇ……。杏璃って案外ビッチだったんだ』


「はぁ? 何を勘違いしてるのか知らないけど、春馬とはそういうんじゃないから。ていうか、司にそんなこと言われる筋合いないんだけど」


 言っていいことと悪いことの判断もつかないのか、この男は……と今にもブチ切れてしまいそうだ。


 憤慨してスマホを握りしめる。暫く無言の時が流れた。








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