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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い
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杏璃との約束当日。待ち合わせ場所であり、これから彼女と過ごすことになる遊園地に到着した司は、そこに集まる面々の顔を見て嵌められたと思った。
ゲート前には杏璃だけでなく、あの男――春馬という名だったか――もいて、さらには由奈までも杏璃の隣に姿を認めたのだ。
「あ、司くーん! ここ!」
最初に司を見付けた由奈が腕を掲げて呼んでくる。
春馬だけならともかく由奈までいるとなると本性は見せられない。
司も軽く手を挙げて応える。
「やあ。ごめん、待たせちゃった?」
杏璃に笑いかけると彼女はすぐ視線を逸らして「そんなこと……ないよ?」と、いかにも気まずそうだ。
「今日は私たちまで誘ってくれてありがとねー」
杏璃の横で由奈が朗らかに言う。由奈には司が提案したことになっているらしいと察する。
「いいよ。ほら、こういう場所は大勢で来た方が楽しいでしょ?」
司は調子を合わせる。
由奈が杏璃と何やら話している隙に、春馬を一瞬だけ睨みつける。
視線に気が付いた彼の口角が上がった。
それで確信する。この場に春馬や由奈がいるのは、彼の策略だと。
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