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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い
「……なんでキミなんかと隣に座らなきゃならないのかなぁ」
手始めに向かったのは、一番人気のジェットコースター。
真夏の暑さに耐え、見知らぬ他人がひしめく危険に耐え、ようやく司たちの順番が回ってきたと息をついたら。
「杏璃ちゃん。私こういうの乗り慣れてなくって。怖くてしがみつきたくなるかもだから、隣に座ってもいい?」
当然司は杏璃と並ぶつもりでいた。それなのに由奈が邪魔をしたのだ。
「もちろん! 怖かったら手ぇ握ってきていいから!」
杏璃も杏璃で、なぜ了承するのか。今回の目的を彼女は忘れているんじゃなかろうか。
そう思っても、やはり由奈の手前口には出せず、一緒になんて並んで座りたくもない男と座らされ、後部にいる杏璃たちに聞こえない声で文句を垂れたのだ。
「そう思うなら三浦さんに言ってやれば? ああ、それとも“この前”みたいに俺がお前の本性をばらしてやろうか?」
春馬の言うこの前の屈辱が甦り、苦々しい面持ちで司は歯噛みする。
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