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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い
その杏璃を故意に怒らせることを司は言った。彼女がまだ自分に固執しているか確かめるためだ。
すると面白いように杏璃は食って掛かってくる。彼女を支配しているのはまだ自分なのだと、優越感が舞い降りた。
だが得体の知れない春馬という男の登場で、優越感は散り散りに羽ばたいていき、代わりに強烈な敗北感が司に襲来した。
春馬が現れた途端、杏璃の意識は彼に持っていかれたのが解った。司は自分に再度意識を向けさせようと、杏璃を脅しつけた。
だが立ちはだかった春馬にまたしても杏璃の視界から自分は消え、再び屈辱を味わう結果になったのだ。
そこから根を下ろす屈辱に耐えられず、二度目の訪問をした際――春馬降臨である。
「……お前、また来てたのか。いい加減、本気で通報するぞ」
電話をしてもしても繋がらない通話に苛立っていると、背後から聞くのも耐え難い声に振り返る。
「またキミか。まさか……杏璃に会いに来たの?」
問うが返ってくるのは鼻で笑う音。
その音は司の中で戦いのゴングの音に変換された。
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