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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い
杏璃との電話で、彼女があの男と一緒にいると聞き、なぜか不快になった。
その理由を己の胸に聞いてみると――単純にあの男が気に食わないとの結論が出る。だってそうだろう。それ以外に筋道を立てられるものがないのだから。
だから春馬に一泡食わせたくなった。彼と杏璃との関係は不明確だが、あれほど杏璃を庇い立てするのだから彼女に好意を持っていると考えるのが一番しっくりとくる。
そこで春馬がいる前で、杏璃と二人きりで出掛ける約束を取り付けると思い付く。自分が好意を抱く女が別の男と出掛けるなどと知れば、さぞや動揺するだろう。
彼の顔が屈辱に歪むのを見られないのは残念だが、想像するだけでも口許が自然とほころぶ。
そうして司の思惑通りに事が運んだかと思いきや――すべては水の泡となり、隣に平然と座る春馬の手の上の中だったというわけだ。
ジェットコースターの発進音が鳴り、レールを走る乗り物の振動が不快さを増長させる。
「――いつまでも思い通りになると思うなよ。僕、借りは何倍にして返す主義だから」
「へぇ……それは楽しみだ」
棒読みが憎々しい。安全バーを外して、突き落としてやりたいくらいむかっ腹が立つ。
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