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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い




 どんどんと上っていくジェットコースター。地面は遥か下にあり、遠く向こうの町が一望出来る。


 しかし司の視界は横目で睨む春馬のみ。


「言っておくけど、杏璃はキミのことなんて好きにはならない。どんなにキミが努力しようとも、それは変えられないんだよ」


 春馬の眉がピクリと動く。カマをかけただけだったが、どうやら当たりだった。


 司の口角が上がる。


「僕がまたちょーっと甘い顔でもしてやれば、杏璃は簡単に落ちる。だって杏璃の理想は、僕のような男なんだから」


 杏璃が自分に気持ちを寄せるようになったら、春馬はどれだけの辛酸を舐める気持ちになるだろうか。


 来たる未来に思いを馳せると、可笑しくて笑い転げてしまいそうだ。


 だが春馬は小さく首を傾げた。


「……お前、一回病院で検査した方がいいんじゃないか? まぁその致命的にイカレた脳を治せる医者がいることを祈っててやる」


「はぁぁ!? 何それ!?」


 春馬の人を馬鹿にした物言いに噛みつくが、返ってきたのは返答ではなく。


「あ」


 彼は一言発し、宙を指差す。ついつられてそちらを見た瞬間――身体がふわりと浮く感覚と共に一気に下降した。


 いつの間にやらジェットコースターは頂上に着いており、加速しては一回転し、ガタガタと揺れながらレールを走った。


 乗客からの絶叫は到着間近まで響き渡り――降りた際に司を襲ったのは首の激痛。


 春馬の不意打ちで身構えることなく落下したのが原因で、見事にむち打ちになったのである。








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