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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い
由奈は後方を歩くその春馬を、杏璃との会話の合間にちらりと見遣る。
今日の目的は第一に司と杏璃の邪魔をとことんすることだ。こういったとき、空気の読めない天然のふりをしてきたのが大いに役立った。
乗り物に乗るときや、司が杏璃に話し掛けても、気付かないふりをして杏璃の横に居座れた。時おり司からの視線が痛かったが、知らぬ存ぜぬをあと数時間貫き通すつもりだ。
そして第二の目的は、杏璃から聞いていた“幼なじみ君”を見てみたかったから。
由奈にとって杏璃は共通の趣味を持つ人以外で出来た、初めて心を許せる友人だ。由奈がオタクで腐女子と知るや、大抵の友人は顔を顰めて由奈と距離を取ろうとしたのだ。
だが杏璃はそうではなかった。由奈の辛辣な口調を聞いても、あまり気に留めていない様子だった。
由奈は杏璃と仲良くなりたいと思った。
その彼女の話によく出てくる春馬に会ってみたいと思ったのは、自分も彼を知れば共通の話題が増えるし、幼なじみという身近な存在を紹介されるのは、何だか特別な関係になれた気がするから。
実際春馬と会ってみて抱いた印象は、自分と近しいにおいを感じるというものだった。
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