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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い
「ところでさ。司くんって潔癖なんでしょ? こういう場所って平気なの? 食べ物とか」
「あー……。たぶん無理してるんじゃない?」
なるほど。司にとって一番は矜持や体面を保つことか。言い換えればそれらを保つためには、何だって利用する男なのだ。
「だってあの性癖やもろもろがばれる前までは、普通に外食とかしてたし。バーゲンとかも付き合ってくれたんだよね」
言いながら杏璃は肩を落としていく。
司との思い出は楽しいものばかりだったんだろう。だから尚のこと彼の裏切りに落ち込んだのだ。
由奈が慰めの言葉をかけようとしたところ、司と春馬が戻ってきた。
「お待たせ」
司が杏璃の横へと座る。杏璃がさりげなく由奈側に椅子をずらした。
「あれ? 司くん、飲み物だけ?」
司以外はプレートに食べ物と飲み物が乗っている。だが彼はミネラルウォーターのペットボトルをテーブルに置いただけ。
「うん。暑さのせいか食欲なくて」
潔癖だからだろう! というツッコミが両側からの幻聴で聞こえる。
由奈も事情を知っているため、司の言い訳に白けてしまう。
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