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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い
「春馬、カレーにしたんだ」
ふと春馬のプレートに目を留める杏璃が呟く。そう言う彼女が選んだメニューは、オーソドックスなハンバーガーセット。
「いいなぁ、カレー」
「だったらお前もこれにすればよかったじゃないか」
「ハンバーガーも食べたかったの! ねぇ、半分こしない?」
「言うと思った。冷めたの食いたくないから、とっとと食えよ」
「はーい。あ、ぐちゃぐちゃにしないでよ。私、ご飯にカレーを乗せながら食べたいの」
「注文の多い奴だ」
春馬は文句を言いつつも、半分だけ避けてルーとご飯を混ぜていく。
由奈は二人のやり取りを微笑ましく眺めながら、杏璃と同じメニューのハンバーガーにかぶりつく。
「なんか……妬けちゃうな」
一方でそれを面白くなさそうに眺める司が、腕を組んで杏璃と春馬を交互に見遣った。
「これじゃあどっちが杏璃の彼氏か解らないねぇ?」
言葉通りの意味でとれば、彼氏が他の男と仲良くしていて嫉妬しているということだ。だが由奈には脅し文句に聞こえた。
杏璃もなんだろう。口いっぱいに詰め込んでいた物を、ごくりと喉を通す音が隣からした。
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