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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い




「杏璃ちゃんが春馬くんを凶悪だ凶悪だって言うから、どんなイカつい男が来るかと思ってたの。そしたら! 春馬くんもイケメンじゃない! もうびっくりしちゃった!」


「春馬が……イケメン?」


 ますます杏璃は顔を顰めるが、そんな彼女をよそに由奈は高揚感を露わに語る。


「まず眼鏡男子ってとこがポイント高い! で、あの黒髪に、つめたーい瞳! キャラも超攻めっぽい!」


「は、はぁ……」


「あの二人がくんずほぐれつするとこ想像すると……きゃあ! やだもー、杏璃ちゃん! 何言わせるのぉ!」


 杏璃の背中をバシリと叩く。


「あたた……。や、何も言ってないよ? おーい、由奈ちゃん。帰ってこーい」


 自分を呼ぶ声は、まるでガラスケースの外から聞こえるようだった。


「最初は険悪な二人が徐々に仲を深めていくって設定、素敵だと思わない!? もっとこう……アクシデントでも起こって接近しないかなぁ」


 偶然でもいいから彼らの顔が重なるところを写真に収めたい。


「あとあと! 壁ドンとかしてくれたら最高なのに!」


 理想としては司が壁際に追いやられ、春馬が壁に手をついて迫っている構図だ。


 三次元の男に興味はないが、三次元のBLは相当なうまみを感じる。


「由奈ちゃーん。いい加減戻っておいでぇー」


 よだれを垂らしそうな勢いで妄想に耽っている由奈には、やはり杏璃の声は遠くから聞こえるようだった。








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