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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い




 夕方になるとチケット代分は遊び倒せただろう四人。けして和気あいあいではなかったが、三人の微妙な関係と、そして男二人を観察するのを楽しめた由奈。


 自分が当事者ではなかったから、気楽に構えていられた。


 しかしそうでない者――由奈を除く三人は異様に疲れ果てていた。


「そろそろお開きかな」


 一日中、強力接着剤かの如く張り付いた杏璃に問いかける。彼女の顔は朝とは比較にならないほど痩せこけた印象を受ける。


「……だね。あ、でも……」


「ん? お土産買いたい?」


「ううん、それはいいんだけど。遊園地に来たら締めにアレ乗りたかったの。けど今日は諦めようかな」


「ああ、観覧車かぁ」


「そそ。春馬たちを残していくのは心配だし」


 午後になると気温はさらに高まり、タオルでいくら拭いても汗が玉のように噴き出していた。その熱に伴い、司の機嫌は由奈にも伝わるほど悪くなっていった。


 人気のアトラクションは混雑を余儀なくされ、他人と肌が触れ合うこともしばしば。潔癖な司には堪らなく辛い環境だったろう。


 それに加えて杏璃の素っ気ない態度と由奈の邪魔、春馬の毒舌に司の王子様スマイルは崩壊寸前だった。







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