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妄想シンドローム
第6章 水面下の戦い
「うん、だからさ。杏璃ちゃんは乗っておいでよ」
「私だけ? それはちょっと寂しいよ。それにあいつが絶っっっ対付いてくる!」
「大丈夫! 私に任せて」
由奈は突き出した胸をポンと叩き、髪をひらめかせて後ろを振り返った。
「司くん、春馬くん! あのね、杏璃ちゃんが最後に観覧車に乗りたいんだって!」
司は由奈が振り向くと瞬時に険しい顔を穏やかに翻し、春馬は無表情な顔をそのまま由奈に向けてきた。
「でね、私は観覧車が苦手で待ってようかなーって」
「そっか。じゃあ杏璃。僕と乗りに行こうよ」
言うや司が長い脚を大きく前進させて近付いてきた。
杏璃が不安そうに由奈を見つめてくる。由奈は彼女に大丈夫と言い聞かせるような笑顔を作った。
「それなんだけど……ほら私、春馬くんとは初対面だし、二人で待ってるってのは緊張しちゃうから。ってことで、春馬くん。杏璃ちゃんをお願いね」
ぎょっとする杏璃の背中を押して、春馬に託す。
「さすがにそれは許せないよ。杏璃は僕の彼女だよ。他の男となんて――」
すかさず止めに入ろうとした司の腕を思い切り掴んだ。
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