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妄想シンドローム
第7章 意外な正体
「ルル、外見てごらん。園内や遠くの町まで見えてくるよ」
ルルを促すと、彼女はその場で反転して膝を腰かけ部分について窓から外を見た。
「わあ! ほんとだ! ソーイチ、きれーだねぇ」
町もすっかり夜化粧をしており、点々と点く明かりが空に浮かぶ星と一体化して美しい景色を作り出していた。
「そうだね」
「ねぇ、ルルとソーイチのお家も見えるかな?」
「アパートはどうだろうね」
電車に乗ってこの遊園地まで来たのだから見えはしないだろうが、ルルの無邪気さに否定するのはがっかりさせてしまいそうで、苦笑を浮かべて濁す。
たっぷりと時間をかけて上がっていく観覧車。頂上付近まで来ると、本当にアパートが見えそうなほどに遠くを望める。
「まだ帰りたくないな……」
ぽつりと零すルルの声が、小さな箱の中に響く。そして唐突に彼女はしがみついてきた。
「そんなに楽しかった?」
「……うん。もっといっぱいソーイチと楽しいことしたい」
間近で潤む青い瞳に見つめられて胸が騒ぐ。係員の彼ではないけれど、この瞳に見つめられて抗える男なんていないだろう。
「また連れてきてあげるよ」
顔が熱くなるのを感じつつ、総一はルルの髪を撫でた。
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