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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉



 冷房を効かせた杏璃の自室もまた、ピンクを基調にした様相だ。だがカフェとは違い、嫌味にならない程度。清楚さをだす白の壁紙が、淡いピンク色のカーテンやベッドのシーツを上品にまとめていた。


 その室内には違和感が有りすぎるといって過言ではない、床に広げられる物。


 極力それらに視線を向けないように、杏璃は氷が浮かぶ麦茶を春馬に振る舞った。


「ふぅ。染みわたるわねぇ」


 場を和ませようと、うふふと笑ってゴクゴク麦茶を喉へ流し込む。


 しかし春馬には気遣いは通用せず、無表情で渡されたグラスを口許で傾け、一気に飲み干して一言。


「本題に入るぞ」


 床にあぐらをかいた春馬は、杏璃に引導を渡すかの如く、空になったグラスをドンと置く。


「一応訊くけどさ。これ……司への復讐に関係あるんだよね……?」


 チラッと見てみるも、直視したくなくてすぐに逸らす。


「当然だろ。じゃあ何のために買い込んだと思ってるんだ」


「や……。春馬もそういう趣味に走ったのかなーなんて」


「アホか。走るとしても、こっそりやるわ」


「や、私に言っちゃってる時点でこっそりじゃないからね?」


「もういい。とにかく説明するから黙ってろ」


 どうやら痛いところを突いたらしい。春馬は剣呑さを語気に増して、よく回る杏璃の舌を黙らせた。






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