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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉
「まず奴は、俺の推測とお前の話から察するに、相当面の皮が厚い。つまりちょっとやそっとじゃ精神的ダメージを与えるのは不可能。そこでこれだ」
春馬が床に置かれる物のひとつ――いや、一冊を手に取って掲げる。
その表紙に書かれているタイトルは『エッチなあの娘の取扱説明書』だ。イラストはタイトルに適す、色気のある若い娘が服をはだけて、首から“取扱説明書”と書かれるプレートをぶら下げていた。
杏璃は性的な知識や興味がないわけではない。だが同年の男子とそういった話題をするのは、気まずさしかないのだ。
家族とテレビを観ていて、ラブシーンが流れると気まずくなる感覚と同じだ。
「う、うん……。で、えーっと?」
杏璃は視線を泳がせて、続きを促す。
「奴の趣味は? そう、官能小説を読み耽ること! それに伴う自慰だ!」
「じ……? いや、いい! 解った! 解ってるから説明しないでいい!!」
一瞬聞き慣れない言葉に疑問を発したが、すぐに思い当たった。しかし春馬は杏璃が理解していないと思って、さらに言葉を足そうとしたのを瞬時に察し、慌てて制したのである。
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