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妄想シンドローム
第7章 意外な正体
「うん、でも。藤堂志保を恨むのはお門違いかな。遅かれ早かれ司は私をフッてた。だっていつまでも騙し通せるはずないでしょ? それこそ結婚適齢期になってから真実を知ってたら、立ち直れなかったよ」
まだ十代のうちに知れただけでも良しとしなきゃ、傷付いた自分が浮かばれない。無理矢理でもそう納得させる。
杏璃がぎこちなく笑ってみせると、春馬は何かに耐えるように奥歯を噛み締めた。
そして次に口を開いたときには、吹っ切れた顔をして。
「藤堂志保に会わせてやる」
「えっ!? 会えるって本当だったの? 冗談じゃなくて?」
「そうだ。で、日帰りでも行けなくはないが、余裕を持って向こうで一泊する。お前の予定はどうなってる」
「ちょ、急に言われても。待って待って! 本気の本気!?」
春馬が大きく頷く。
嘘だろう? という気持ちを拭えないが、手帳に書き込んである予定と相談。
夏休みに執筆作業をすることになってからは、バイトはあまり入れていない。週に三日程度だ。
他は由奈と例の同人誌即売会に行くのと、高校の友人との集まりがいくつかあるだけ。
例年なら司と毎日のように会っており、びっしりとハートで埋め尽くされた手帳が、今年は空欄が目立つのがちょっぴり悲しかった。
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