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妄想シンドローム
第7章 意外な正体
「わりと空いてます」
悲しんでいいのか喜んでいいのかそんな微妙な面持ちで、春馬の予定と擦り合わせるために手帳を見せる。
「スカスカで何よりだ」
若干らしさを取り戻した春馬が手帳に視線を落とし、嫌味な口調で口角を上げる。
元気がなかった方が可愛げがあったのに、と杏璃は恨めしい視線を彼に投げた。
「ここなんてどうだ? 三日間も予定なしだが」
「もってゆーな! ……私はいいけど春馬は大丈夫なの?」
「元からそっちの予定に合わせるつもりだった。バイトも誰かと代わってもらえれば問題ない」
「そう? ならこの日ってことで。けどさぁ、春馬とその藤堂志保ってどういう関係? そもそも本当に本人なの?」
「……本人に間違いないそうだ。関係はその……まぁ、お前も会えば解る」
春馬に藤堂志保のことを聞き出そうとすると渋い顔をするばかり。会えば解ると彼は言うが、日帰りで帰れない遠方に杏璃は知り合いらしい知り合いもいない。
半信半疑のままこの日の原稿チェックは終了。春馬に相談したかったことは、どうせなら藤堂志保にしてみたらどうかという彼の提案で、一旦寝かせておくことになった。
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