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妄想シンドローム
第7章 意外な正体
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「えー! 春馬くんと二人で旅行!?」
漫画本がひしめき合う店内で由奈の叫びが響く。ここは所謂ネットカフェ。
以前由奈と約束をしていた、彼女お気に入りのお店に連れて行ってくれるということなので来てみれば、なんとネットカフェだったのだ。
だが女性も入りやすいお洒落な雰囲気で、薄緑を基調とした店内は観葉植物がそこかしこに置かれ、癒しの空間を作り出していた。
杏璃がイメージする閉鎖的なネットカフェとは違い開放的で、本を読み耽っている客もいれば、杏璃たちのようにお喋りをしながら読書を楽しむ客もいて。
出される飲食物もセルフサービスではなく、店員が運んでくるタイプだった。
なのでこうして喋っていても誰も気には留めないが、あまり大声を出すと乙女の園の二の舞になる。
杏璃は口許に人差し指を立て、しーっと由奈を窘めた。
「ごめん。だって驚いちゃって」
「ほんとだよねー。あの春馬が官能小説家と知り合いだったなんて」
「そこじゃなくて! 旅行ってことはつまりお泊まりありってことでしょ?」
「うん。なんかね、藤堂志保の家に泊めてもらえるらしいの。いいのかなぁ。全然知らない人の家に泊まるとか、図々しくない?」
「杏璃ちゃんが気にしてるとこそこなんだ……」
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