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妄想シンドローム
第7章 意外な正体



「いくら聞いても教えてくれないのよね。私が前に名前出したときは、知ってる素振りなんてなかったのに」


 春馬に泣きついた際、知り合いだったなら当然彼はその名に反応したはずだ。今になって打ち明ける意味がないし、最近知り合ったのだろうか。


 いや、それにしては自宅に泊めてもらう約束まで取り付けるなんて、浅い仲とも思えないし。


「そもそも藤堂志保って男? 女? 名前からしたら女かなぁ」


「ネットで調べたら女みたい。でもそれ以外、年齢や経歴は不詳。顔写真の画像を探してみたけど出てこないの」


「画像はともかく、年齢経歴不詳ってのが怪しくない? 本当に女なのよね? まさか春馬くんに騙されてるなんてことは……」


「騙す?」


「そう。たとえば春馬くんは怪しいバイトに手を染めてて、杏璃ちゃんをどこかに連れ込んで、エッチな映像を撮ろうとしてるとか!」


 由奈は真にそのようなことが起こる物言いで杏璃に迫る。


 杏璃は引き攣った顔で首を振った。


「それこそないよ」


「なんでそう言い切れるの? 男なんてほんっとどうしよーもないんだから! 知ってる? 男の頭ん中なんてほぼエロで埋め尽くされてて、映像化する機械でもあれば大抵逮捕されちゃうわよ」


 それを言ったらここ最近の杏璃も逮捕されかねない妄想ばかりだ。そのような機械がなくて、心底感謝する。







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