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妄想シンドローム
第7章 意外な正体



 春馬は慣れた様子でバス停へと杏璃を導き、降りてからもその足取りに迷いはなかった。


 それとなく訊ねてみると、何度か来たことがあるらしい。


 そうして着いたのは一五階建ての立派なマンションだった。


 マンションの入り口は暗証番号を入力するとドアが開くシステムになっていて、そこでも春馬はインターフォンを押さずして暗証番号を押したのだ。


 エントランスホールも立派な造りになっており、壁には絵画が飾ってあり、置かれる大きな花瓶に豪勢に花が飾り付けられていて、豪華なホテルを思わせる。


 杏璃は目を瞠って辺りを忙しなく見渡していると、春馬に先を促される。


 慌てて春馬に付いていき、エレベーターに乗り込む。


 彼は七階のボタンを押す。


 静かに動くエレベーターの中に、春馬と杏璃それぞれの緊張が充満する。


 人見知りというわけではないが、その道の第一線で活躍していて、しかも春馬を疲弊させる人物にこれから会うとなると胃の辺りがキュウと縮む。


 春馬は春馬で顔が強張っている。無表情に輪がかかってますます凶悪な人相だ。


 軽快な音を鳴らし、エレベーターの扉が七階で開く。


 どちらともなくゆっくりと息を吐いた。






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