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妄想シンドローム
第7章 意外な正体




 立ち話もなんだからと招き入れられた室内。


 LDKを兼ねたその部屋は広々としていて優に二〇畳はありそうで、家具や飾りは品よく纏められていた。


 壁には備え付けの棚があり、小さなガラスの器に入った植物や写真が飾られているほか、小説家らしく純文学の小説や専門書らしきものも並んでいる。


 杏璃は状況をまだ飲み込めない心境で、濃紺の皮張りのL字型のソファーに春馬と並んで座っていた。


 チラチラと春馬に視線を送るが、彼はわざと無視しているとしか思えないほどに視線に気が付かない。


 そこへどこからどう見ても遼子とおぼしき女性が二人分の飲み物を運んでくる。


「どーぞ。麦茶でよかった?」


「あ、はい。ありがとうございます。えっとそれで……」


「お腹減ってるよね? もーちょっと待ってて。旦那が帰ってきたら作ってくれるから」


「お腹は空いてますが……そのぉ」


「あたしが作らないのかって? あー、ダメダメ! 家事はからっきしなの。あたしより旦那のが何倍も料理上手だから」


「へぇ。旦那さん、お料理上手なんですね。……って、さっきからわざとですよね!?」


「あはは! バレたか!」


 豪快に笑う遼子は杏璃の真向かいにあぐらをかいて座った。







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