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妄想シンドローム
第7章 意外な正体
「改めまして。藤堂志保こと雨宮遼子です」
遼子が軽く頭を下げると肩からサラリと髪が流れ、顔を上げると同時にその髪を搔き上げる。
聞きたいことは山ほどあるが、遼子に会って春馬が蒼白になっていた理由や来たくなさそうだった理由に頷けた。
「愚弟がいつもお世話になってるわね」
そう、彼女の旧姓は春馬――隣にいる彼の年の離れた嫁いでいった姉なのだ。
「遼子さんが藤堂志保だったなんて……驚いてなんて言えばいいのか……」
杏璃はまだ信じられず、遼子をまじまじと見つめる。
春馬と友人関係になってから遼子のことも知っている杏璃。彼女には昔から驚かされてきたのを思い出す。
遼子は現在、大きく肩の開いた大きめのTシャツをワンピースとして着ている。ラフな格好ながら色気を醸し出している。
化粧は薄く、少し吊り上がった切れ長の目と筋の通った鼻。眼鏡をかければ春馬とそっくりな美人だ。
だが杏璃の記憶には、様々な姿をした遼子が浮かぶ。
出逢った時、遼子は高校生だった。今は白い肌は当時焼きすぎじゃないかと言いたくなるくらい黒く、化粧は濃かった。髪は色を抜きすぎてパサパサで、喋り方も当時流行っていたギャル語を操っていた。
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