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妄想シンドローム
第7章 意外な正体



「で、あんまりにも冷たいから、腹立っちゃって。優希の部屋のドア蹴飛ばして、壊して入ってやったの。そしたら机の上に小説の書き方の要点とか纏めた資料が置いてあったの見付けちゃってさぁ」


 ドアを壊すだなんて、軽い調子で話す内容じゃないと思う。遼子には悪いが、春馬が彼女を苦手とする理由の一端が垣間見えた気がする。


「あたしはてっきり優希が小説に目覚めたかと思ったわけ! でも聞いたらそうじゃないって言うじゃない。じゃあ何で資料なんてあるのか気になるのが、人情ってものと思わない?」


「はぁ……」


 口を割らないならそっとしておくのが人情だと杏璃は感じたが、遼子の論理は引っ掛かりを覚えたらとことん追求することらしい。


「あれこれあった末に、あたしの職業だとか杏璃ちゃんのもろもろだとかを打ち明けあって、姉弟仲を深めたってわけ」


「私のもろもろ……?」


「そう。彼氏にフラれて本性知って、復讐するために官能小説書いてることとか」


 ほぼ全容を知られているわけか……と、杏璃は何とも複雑な心地になる。


「言っとくが、こいつが無理矢理話させたんだからな」


 やっと口を開いた春馬は、苦々しい口調だ。


 彼が人のプライバシーに関わることをペラペラと話すとは思えないので、あの手この手で遼子が口を割らせたんだろう。






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