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妄想シンドローム
第7章 意外な正体




 大体の経緯は解った。だがまだ疑問が残っていた。


 杏璃の記憶が確かなら、遼子は弁護士を目指して大学は法学部へ進んだと聞いていた。ただ彼女が大学を卒業した当時、今のように春馬と頻繁に連絡を取り合っていなかったので、その後どうなったかは知り得ていなかったのだ。


「遼子さんは弁護士になって、バリバリ働いているんだとばかり思ってたよ」


「あたしだって当時はそうなると信じてたんだけどね。司法試験に見事落ちちゃって」


「そうだったんだ……」


「そうそう。流石のあたしも落ち込んでさ、一時期腐ってたのよ。でもいつまでも腐ってられないなーってなって、何を思ったのか小説書いて公募に出してみたわけ。そしたら審査員賞もらっちゃって、あれよあれよという間に官能小説家になってた」


 あはは! と大口を開けて笑う遼子。『藤堂志保』というペンネームは、藤堂は母親の旧姓で、志保は司法試験に落ちたところから取ってあるのだと語る。


「なんていうか……色んな意味で凄すぎるよ」


 試験に落ちたことがきっかけで小説を書こうと思い立つのは、何とも彼女らしいっちゃらしい。


 そして処女作で賞をもらい、デビューにこぎつけるのも、遼子なら不思議と納得してしまうのだ。






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